あれは確か、小学高学年か中学生になったばかりの頃。
あたしは、家から1時間ちょいかかる、県内でもそこそこ有名な私立進学校に通っていた。
幼稚園から大学まであるその学校は、全国にも姉妹校があるため、東北での知名度はなかなかのもの。
そのため、幼稚園の頃からわざわざ電車通学をする子も珍しくなく、同じ学校の子が近所にいる事はめったにない環境だった。
そんな、県内外の遠路から子供達が集まるような学校だったため、公立より学校が終わる時間は若干早く、下校時の寄り道には、保護者と担任の許可が必要とされていた。
まぁ、みんな住んでる所がまちまち過ぎて、集団下校は難しいわ、バスやら電車で帰宅までに時間がかかるわ。
それやで、暗くなる前にみんな家に帰して、誘拐されたり事件に巻き込まれんようにしよーっていう事だったんやろね。
けど、遊びたい盛りの子供達(∩・∀・)ハィ
本当は、下校時刻が過ぎても友達と遊びたい。
休みの日にはお出かけしたりいっぱい遊びたい。
しかし、いわゆるお嬢様校と言われてるような私立の学校は、びっくりするほど厳しいもの。
平日帰宅後や休みのお出かけ、遠出や買い物は保護者同伴。
ゲーセンやカラオケはもちろん禁止。
そんな校則に縛られながらも、休日に気兼ねなく、友達といっぱい遊べる方法があった。
それが、「お泊まり」だった。
ちょっと怖い話が好きなあたしの友達が、日頃から、あたしが話てる「自分家」に行ってみたい、と言い出した。
その頃はまだ嘘つき呼ばわりもされておらず、普通に、家で起こる話を何気なくしていた。
あたしは日常会話程度のつもりだったが、友達からしたら、ちょっと不思議な話だったのだろう。
いつの間にか彼女らは、いつかあたしんちに行ってみたいね、と言うようになっていた。
そんなある日。
久しぶりに、土日にオヤジが仕事で帰って来ない時があった。
そこで、広い書斎的なオヤジの部屋に、あたしと友達二人の三人で泊まったらいーんじゃないか、という話に。
早速、全親御さんの許可と担任の許可をもらって、我が家に友達が泊まりにくる段取りが出来上がった。
市街地から電車で35分。
田んぼに囲まれた田舎町に、あたしの家はある。
友達二人は、市街地からうちとは逆に15分くらいの港町に住んでいた。
まるで環境が違う町に訪れて、友達二人ははしゃいでた。
A「いやぁ~、なんかお寺みたいなうちだぁ~(*´艸`)」
B「わくわくすんなぁ、お化け屋敷(*゚ω゚*)」
よく考えると、ひどい言われようだわ。
そんな訳で、おやつ持参の遠足気分で我が家に来た友達二人。
実は、親戚以外が我が家に入るのは、あたしの知る限り、これが初めてだった。
AB「おじゃましまーす」
パシッ
AB「!!!???」
パシッ!パシパシッ!
我が家では聞き慣れた「おかえりなさい」のラップ音。
誰かが帰宅すると、必ず玄関あたりの壁が鳴る。
古い家の頃から、そんな感じでパシパシ言っていたので、広くて新しい家に建て替えて、音が響くようになっても、特に気にした事はなかった。
じくい「気にしなくていいよ。
なんか、うち、よくきしむんだよねぇwww」
この頃、これがまだラップ音だと知らず、家がきしむ音だと思ってた(∩・∀・)ハィ
そんな、いつもの音が鳴り響く…
と、思っていたら
「パシ…ギシ…パシ…ギシ」
じくい「あれ?」
「バキバキパシビシッギシギシバシッパシギシギシバシッパシギシギシバシッパシギシバシッパシギシギシギシバシッ!」
この日は違ったの。
玄関だけやなくて、家中が鳴った。
さすがにあたしもびっくりしたけど、まぁ我が家だし(笑)
怖いとか全く思わんかったが、しばらく友達は、靴を脱ぐ事も忘れて呆然としてた。
じくい「何してるの(笑)こっちー(((。・ω・)」
AB「あ、あぁ、うん」
慌ててあたしを追い掛けてきた二人は、リビングで一休み。
A「びっくりしたぁ(;´Д`)」
B「変な音がいっぱいしたねぇ(;゚∀゚)アハハハハ」
じくい「なんか今日はいっぱいきしむねぇ(笑)」
AB「あれはきしむ音じゃないよ!Σ( ̄□ ̄;)」
じくい「?!Σ(゚Д゚;ノ)ノ」
そこで初めて、我が家のそれがラップ音だと分かった。
だって、あまりにも日常的な音やでさ?
他の家でも普通にパシパシ鳴るもんかと思うやん。
生まれた時からそんな環境やったでさ、まさかうちが特別だとは思わなかった訳。
その後も、めったにラップ音が鳴らないリビングでも、結構パシパシ鳴ってた。
最初こそ、友達二人は怖がってたが、子供は順応が早い(笑)
そのうち気にしなくなって、ワイワイ騒いで、家の中を探検して歩いた。
ピアノを三人で違う曲を弾いてみたり、先生の悪口大会をしたり、若干防音仕様の我が家やで、もう、やりたい放題。
エンドレスハイテンション∩(*゚∀゚)∩バァー
子供って、ホンマすごいと思うわ。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎるもんで、気がつけば夕飯の時間になってた。
あたしと友達二人。
それと、おかんにばあ様。
5人でご飯を食べていた。
「ガラガラガラガラ…」
A「…今の、何の音?
上から聞こえた気がしたけど…|ω・;)」
じくい「ああ。
あたしの部屋の、ガラガラついてる鏡か、小さい机が動いてる音(´・ω・)」
B「…誰かいるの?|ω・;)」
じくい「誰もいないけど?(´・ω・`)」
AB「ぎゃぁー!!Σ(゚Д゚;ノ)ノ」
おかん「やかましい!
早く食べちゃいなさい!!!」
変な音はするわ、誰もいない部屋から物が動く音がするわ、うちのおかんはおしっこチビるくらい怖いわ、今考えると散々(;´Д`)
友達二人も、ちょっと来た事を後悔していた。
ご飯食べてる最中も、リビングの上のあたしの部屋からは、ひっきりなしに
「ガラガラガラガラ」
と、音がする。
いつもはここまであからさまな音が続く事はない。
もしかして、親戚以外の人間が敷地に入ってきたもんで、家が友達を警戒してるんかな、なんて思ったりもしてた。
夕飯を食べ終え、また一騒ぎをしておかんに怒鳴られ、渋々お風呂に向かう廊下では、やっぱりありえんくらいにラップ音が鳴った。
A「ちょっと…シャレになんないよこの家ぇ(((;゚д゚)))」
そう言って友達が泣きそうになると、ちょっと静かになる。
霊ってのも、子供の涙には弱いらしい。
お風呂に入ってまた騒いでいると、おかんからまた怒鳴られた。
かなりの時間が経っていたようだが、三人は、のぼせることもなく、まだまだハイテンションで、オヤジの書斎にある布団に入った。
時間は、深夜0時近かったと思う。
寝ようか、と言って、みんなで寝たフリをしていると、誰かがおならをして爆笑。
また、三人が寝たフリをしていると、1人が、担任のモノマネで「フラスコぉ~ん」とか言って、また爆笑。
そんな事を繰り返し、全く寝れなくなっていた時
「ミシッ…ミシッ…」
B「ちょっと、シっ!|ω・)」
「ミシッ…ギィ…ミシッ…ギィ…」
人が歩いてくる音がした。
ヤバい
かなり騒いでたから、またおかんに怒られる(ノω\)
そう思って、うちら三人は、急に寝息をたて、本格的に寝たフリをした。
すると
「ミシッ…ミシッ…ミシッ…ミシ…」
足音が遠のいた。
じくい「びっくりしたぁ!少し静かに騒ごう|∀゚)+」
AB「だね~」
そう言いながらも、陽気なハイテンションな子供が三人集まって、大人しくできる訳もなく。
また、いつの間にか騒いでしまっていた。
すると、また
「ミシッ…ギィ…ミシッ…ギィ」
今度は少し早めに、足音が近づいてきた。
A「しっ!」
「ミシッギィミシッギィミシッギィ」
B「…あれ?」
足音が、なんかおかしい。
そう。
足音は、ドアの向こうの廊下からではなく、天井の方からしていたのだ。
A「…上に誰か住んでる?」
オヤジの部屋は二階にある。
じくい「うち、二階建て…」
ネズミとか、そういう音ではない。
確実に二足歩行の音なのだ。
「ミシッギィミシッギィミシッギィミシッギィ」
B「うわっうわっ!真上にきてるよぉ(T∀T)」
A「しぃーっ!布団かぶって寝たフリしよう」
恐怖にかられたうちら三人は、布団をかぶってみんな寝静まってるフリをした。
沈黙が流れる。
あたしにはその沈黙が我慢できなかった。
じくい「ぷぅ~ぅ」
おならをした。
A「ちょっとぉ!
くっさーい(笑)」
B「密室でやめてよぉ(笑)」
布団をバッサバッサして、おならの臭さから逃れようとした。
そして、三人は顔を見合せて大爆笑(ノ∀`)σ゙
…三人が大声で大爆笑をした、次の瞬間!
「ダンダンダンダンダン!!!!!!」
天井から物凄い音!
三人「ぎゃあーΣ(゚Д゚;ノ)ノ」
ウルサイ、静かにしやがれ、とばかりに、天井裏から物凄い勢いで天井を叩かれた!
それはラップ音の比ではなく、確実に、誰かがグーで力一杯天井を殴り付けた音だった。
それからしばらく、誰かが天井裏を、うちらがうるさくしてないか確認するかのように、行ったり来たりする足音が続いた。
半べそかきながらも疲れていたうちら三人は、意外にグッスリ寝て、元気に朝ごはんを食べた。
そして友達は帰り際に
AB「二度と来ないからぁ(T∀T)」
と言っていた。
友達が帰ってから、おかんに、昨夜の出来事を話した。
すると
おかん「夜中にあんだけ騒いでれば、そりゃ誰だって怒るでしょ」
じくい「え?」
おかん「安眠妨害されて怒ったのよ、天井裏で寝てた人が」
じくい「天井裏で寝てた人?」
おかん「ああ、あんたは大丈夫だから、気にしなくていいの(笑)」
な に が い る ん だ
それ以来あたしは、夜、怖くて、オヤジの部屋に近づけなくなった。
【怖い話】家の天井の棲むナニカ
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