母方の家系は、それはそれは皆様霊感が強くてびっくりします。
ばあちゃんの弟、おじさんっていうのかな?
その人んちも、バッシバッシとラップ音が普通に鳴り響く家なんです。
1人でいても賑やか、というか、なんというか…
母方の家系の家は、みんなそうなんです。
うって変わって、父方の家系の家。
これが、なんと、静かな事(笑)
しかし、父の実家には、小さい頃よく遊びに行きましたが、なんとなく怖くて、1人で留守番なんざできない家でした。
双子のイトコと仲良かったため、大抵は三人で留守番。
よく遊んだのが、かくれんぼ、人生ゲーム、オセロ、ドラゴンボールごっこ。
特に好きだったのが、かくれんぼでした。
家はかなりの田舎にあり、都会では考えられない広大な土地にありました。
道路を挟んだ向こう側まで、自分とこの土地だそうで、子供ながらに
「広過ぎんだろ(笑)」
と思ってました。
かくれんぼをするには広く、そのうち、
「かくれんぼは家の中限定な」
と、いうルールが、当然のようにできました。
そんなオヤジの実家には、道路を挟んだ向かいに、小さなお社(やしろ)がありました。
3、4人が通れる程度の小さな鳥居。
鳥居のすぐ目の前に、小さな賽銭箱と社(やしろ)。
ここもオヤジの実家の土地。
そう、つまり、オヤジの実家は、小さい神社を持つ神主の家なんです。
この事実、つい昨日、電話でおかんから聞いたばかりでちょっとびっくりしてます。
で、そんな社(やしろ)は、隣には普通に民家があるのに、そこだけ高い木々に囲まれ、昼間でも暗く、異様な雰囲気。
そのため、双子のイトコとあたしにとっては、大人の目を盗んでタバコを吸ったり、子供だけで秘密の会話をするのに最適な隠れ場所でした。
あれは中学の頃。
秋もそこそこ、枯れ葉舞い散る季節。
田舎のヤンキーに憧れていたくらいの鼻垂れガキだったあたし。
1つ年上の、地元近隣高校ではイケメン双子で有名だったイトコと一緒に、隠れてタバコを吸う時間が、ちょっと悪になれた気がして好きでした。
恋心未満、友情以上。
兄弟のいないあたしにとって、幼なじみの双子のイトコは、自慢のお兄ちゃんでした。
だから、いつも後を追いかけて、一緒に遊んだり、悪巧みをしたりして大人を困らせていました。
そんな、いつもの風景。
小さな廃れた神社の裏で、隠れてタバコを吸っていた時です。
急に風が吹き荒れ、タバコの火の粉が飛び散り、慌てて持ってきた灰皿替わりの空き缶にタバコを入れ消す。
しばらく冷たい風が吹き荒れ、もう帰ろうか、と言う話になりました。
タバコを吸うと、タバコの匂いが残るので、吸ってしばらくは談笑して残り香を消してから帰るのがいつものパターンでした。
ところが
A「なぁ…」
B「うん…」
キョトンとするあたしを無視し、辺りをキョロキョロしながら、何やら真剣な顔で話し合う双子のイトコ。
とにかくすぐ帰ろう、という事になった。
じくい「ちょっと待ってよぉ(;´Д`)
まだタバコ臭いよ?」
あたしが駄々をこねてると、また、風が吹き荒れた。
A「ヤバいって!
帰るべ!」
B「帰るぞ!来い!」
イトコに腕を捕まれ、一目散に家に帰る三人。
案の定、タバコ臭いと大人達に怒られ半べそ。
じいちゃんの仏壇がある、広い床の間に正座させられ
「昼飯抜き!」
と反省会。
大人達は居間に引っ込み、昼間っから酒盛り。
じくい「だからまだあそこにいれば良かったのにぃ(-"-)」
AB「…」
何故か黙ったままのイトコ。
じくい「なんですぐ帰ろうって言ったの?」
A「お前、聞こえないのかよ、あの声」
B「…なんだ、あれ…」
震える二人。
キョトンとしているあたし。
A「風が吹いた時、笑い声が聞こえたろ?」
B「子供の声だろ?」
A「そうそう、子供の声みたいな…」
あたし、目が点(・ω・)
じくい「風の音じゃないの?…声なんてしてないよ?」
A「気のせいじゃねぇよ…」
B「今も聞こえるべ?」
A「…あれ、笑い声じゃなくね?」
B「じゃあなんなんだよ」
何も聞こえません(´・ω・)…
A「なんつぅか…今にも吐きそうな…」
B「…確かに…」
A「なんか、声、近づいてね?…」
B「…ぐえぇえって…聞こえね?…」
聞こえないσ(・ω・)
A「ヤバいって!どうしよう!」
B「隠れよう!」
じくい「待ってよ、あたしも隠れる!」
大人の所に行けば、また頭ごなしに怒られ、床の間で正座させられる。
だから、とにかく隠れよう。
そう思った訳。
小さな頃、よく三人と死んだじいちゃんの四人でかくれんぼした時のように、一斉に隠れる。
あたしもイトコも大人になって、もうかくれんぼもザリガニ釣りもしなくなった。
久しぶりのかくれんぼ。
あたしは訳も分からず、ただただかくれんぼを開始した。
小さな頃、あたしが一番好きだった隠れ場所が、階段下の納戸。
大人1人が入れるか入れないかのスペース。
そこは、中にあるホウキの柄を取っ手に引っ掛けると、もう外からじゃ扉が開かなくなるので、黙ってればあたしが隠れてるとバレない、必殺の隠れ場所だった。
成長したあたしは、無理やり中に入り込み、身動きとれないくらい狭く感じるようになってしまった納戸に悪戦苦闘。
なんとか内側から開かないように、ホウキを引っ掛けこしらえる。
イトコは、1人は二階に上がり、1人は一階の奥の倉庫部屋に走る音がした。
二人のお気に入りの隠れ場所だった。
二階の死んだじいちゃんの部屋のクローゼット。
一階奥の倉庫部屋の机とタンスの隙間。
二人が隠れるのは、いつもそこだった。
思い出したら、なんかワクワクしてきた(*゚ω゚*)
ここから出て、二人を探してやろうかな、という気持ちになった。
そりゃそうだ。
三人で隠れてしまっては、探す鬼がいないじゃないか。
あたしは、納戸の取っ手に引っ掛けたホウキを外し、外に出ようとした。
「コンコンコン」
?(´・ω・)?
納戸の外からノックされた。
さては、あたしと同じ事を考えたイトコが探して回ってるんじゃないか?
そう思い、息を殺してやり過ごそうとした。
「コンコココンコン、コンコン」
!(・ω・)
じいちゃん?
死んだじいちゃんが、かくれんぼで納戸にあたしがいると分かると、そうやって扉を叩くんだった。
まるで、死んだじいちゃんがかくれんぼの鬼になって、探し当てたみたいに。
じくい「…じいちゃん?」
あたしは、ホウキの柄を外して納戸の扉を開けようとした。
「バン!!!!」
納戸が外から、おもいっくそ叩かれた。
出てくるな。
そう言われてる気がして、あたしは、そのままホウキの柄を引っ掛け、外から開けられないようにして、またジッと息を殺して隠れていた。
するとすぐに、二階に上がる足音がした。
納戸は階段の下にある。
誰かが二階に上がると、いやでも納戸に音が響く。
「ギィ…ギィ…ギィ…ギィ
‥‥‥‥パタン」
あ、死んだじいちゃんの部屋に誰か入った。
そこにはイトコが隠れているはず。
よく分からんが、とにかくあたしは隠れている方が良い気がして、ジッと納戸に隠れていた。
静かだった。
時折、ずーっと向こうのリビングから、大人達の笑い声がかすかにする。
怒られるのが怖くて、大人達のいる所に行こうとしなかったのを後悔した。
なぜか、納戸の外がやけに怖い。
二階に上がった足音も、一向に戻ってこない。
さっき納戸を外からノックしたのは誰?
それより、さっきから、廊下を行ったり来たりしている、床を引きずるような音は一体なに?
色んな事が頭の中をぐるぐるした。
「あ!子供達がいない!!」
床の間にいないあたし達に気付いた大人達が騒ぎ出した。
うちら三人の名前を交互に呼ぶ声。
あたしはたまらなくなって、納戸を飛び出した。
飛び出した瞬間、何かにつまづいた気がしたが、足元には何もなかった。
ちゃんと床の間で正座してなかった事を怒られるが、そんな大人の話し途中で、あたしは他の二人の元へ走った。
「コラ!まだ話し途中…!」
まずは一階奥の倉庫部屋。
タンスと机の隙間。
青ざめたイトコがいた。
無言で大人にこっぴどく叱られている。
次に、二階、死んだじいちゃんの部屋。
クローゼット。
いた。
やっぱり青ざめて、無言のまま、二人はこっぴどく叱られた。
「反省しなさいって言ってるのに、いい年してかくれんぼなんて…!」
A「しょうがなかったんだよぉ」
泣き出した。
年上でイケメンのイトコが、二人揃って泣き出した。
B「じいちゃんが助けてくれたぁ(泣)」
二階に隠れてたイトコが言った。
A「俺も、じいちゃんに助けてもらったぁ(泣)」
二階じいちゃんの部屋のクローゼットに隠れてしばらくすると、床を這いずる音がしたのだと言う。
その音がクローゼットの前に来た時
「ここにはいませんよ」
死んだじいちゃんの声がしたそうだ。
そうすると、床を這いずる音が遠退いた…
一階奥の倉庫部屋。
タンスの隙間からかすかに見える視線の先には、床を這ってくる血まみれで、腕がおかしな方向に曲がってる人が見えた。
タンスの目の前まで、それは這って来た。
ダメだ、見つかる!
そう思った瞬間
「ここにはいませんよ」
その声に驚き、隙間から見上げると、後ろ姿だったが、それは死んだじいちゃんだった。
じいちゃんにそう言われると、血まみれの人はあきらめたように方向転換をし、這いずりながら、倉庫部屋を出ていった。
ぐえぇえっ、ぐえぇえっ、って言いながら。
大人達は一様に、そんなウソをつくな、と更に怒った。
泣き続けるイトコ。
その一件は、結局、うちら子供達の虚言で片付けられた。
あたしは何も見ていない。
じいちゃんの声も聞いていない。
でも、納戸をノックしたあの合図は、あたしと死んだじいちゃんしか知らない合図。
あたしは、廊下を這いずる音も聞いている。
小さな神社で隠れてタバコなんか吸って、変なモノが憑いてきてしまった。
それをじいちゃんに助けられた。
うちらはそう思っている。
そして、あの出来事は二度と口にしていない。
親戚は笑って言う
「アナタ達、本当におじいちゃん好きなのね」
家に着くなり何よりも真っ先にじいちゃんの仏壇に線香をあげるのが、うちら三人だそうだ。
じいちゃんに感謝してる。
そしてあたし達はあれ以来、あの小さな社に近づかなくなった。
道路の向こう側に、二度と行ってない
【怖い話】小さなお社
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