当時俺はバイト先までは車で通ってた。
家までの道にトンネルがあるんだけど、
いつものように深夜3時位にそのトンネルを通りがかった。
するとトンネルのはじっこを男が歩いてる。

歩行者用の道なんて無いから思いきり車道だし、時間も時間。
ちょっと気になって見てた。
進行方向は同じだったから、始めはその人の後ろ姿を見たわけね。
だんだん近付くにつれて、異様な事に気付いた。

時期は冬だし外は寒い。
なのにその人は半そで、短パン。
別にランニングしてるようでもなかった。
一番気になったのが、その人、足が長いんだ。
いやもうモデルとかそんなレベルじゃない。明らかにおかしい長さ。
鬼太郎にでてくる妖怪で、手長、足長、てわかるかな?
あれの足長のほうに似てたって。

(うわー、気味悪いなあ…)

まあ深夜にそんな人見たら誰だって嫌だよな。
俺はあまり見ないようにしてアクセルを踏み込んだ。
んで、通りすぎた後にチラっとバックミラー見たわけ。
ここからはお約束。

も の す ご い 勢 い で 走 っ て 追 い か け て き て た 。

目は今にも飛び出すんじゃないかって位ひん剥いて、
狂ったように腕を振ってる。

まあバックミラーでカオが見えるくらいだから、すぐそこまで迫ってたんだろな。
俺は気が動転して、めちゃめちゃなスピードで飛ばして逃げた。

しばらく走るとどうやら振り切ったっぽい。
家も近くなってきて、だんだん落ち着いてきた。
疲れてたし見間違いだろうと。
次の角を曲がると家・・・だったんだが
その角を曲がった瞬間信じられないものを見た。

門の前にあの男がいる!

俺は車だし自分家に帰るには当然最短ルートを通ってる。
俺より先に家に着くなんてありえない。第一なんで俺の家知ってるんだよ!

怖くなった俺は朝まででコンビニに居ようと思った。
でもUターンするには道も狭いし、逆に気付かれると思い
家を通り過ぎてコンビニに行こうとした。
それがいけなかった・・・

ちょうど男の前(実際には足しか見えなかったが)
を通り過ぎようとした時だった。

「みつけた」と言う声がした。
実際には「ミヅゲダ」が近いと思う。

フロントガラスには男のカオがあった。
深夜で街灯の明かりだけなのに男のカオはハッキリ見えた。

一部分を除いて・・・それは・・・目。
両の眼だけは、まるでコールタールを塗った様に真っ黒だった。
男はニヤリと笑い、再びこういった

「ミヅゲダ」・・・。

男のカオはフロントガラスをすり抜けて俺に近づいてくる。

「そこまでだ」
聞いたことのある声、寺生まれで霊感の強いTさんだ
Tさんは俺の車の助手席に乗り込むと、男のカオに両手を突き出し
「破ぁ!!」と叫んだ

するとTさんの両手から青白い光弾が飛びだし、男を包み込んだ。
男はみるみるやせ細り、やがて消えていった。

「なんでここに?」
「コンビニ行くのにアシが必要でな、さあ行くぞ・・・」
そう呟いて片手でタバコに火をつけるTさん。
寺生まれってスゲェ・・・その時改めてそう思った。