あたしは親友に男を寝盗られ、自殺に失敗し、家出を決意した。

それでさえも心霊現象が日常茶飯事な我が家。

自殺しようと、手首をほじくり、血まみれの肉の中から見えた血管を縦に切り裂こうとしたら、それは神経でびっくらこいた。

神経に刃をたてたら痛いのなんのって。

死のうとしていた事すら忘れ

「お母さぁん、いたぁい!死ぬぅo(TдT≡TдT)o」

騒いで救急車で運ばれた。

それ以来、見えないあたしに何かが何かを囁いてる。


記憶がなくなる事がしばしば起こり、さすがにこいつぁヤバいと家出した。

当時仲良くしてた同級生に、親の離婚問題がゴタゴタしてて、同じく家出をしたいと思ってる子がいた。

ちなみに女子校の二人。

女の子二人で、仙台市内に部屋を借りた。

と言っても、全額あたし持ちやったけど…(´・ω・) 





「父が私に暴力をふるうので、母がしばらく一人暮らししなさいって…」

そんなコ芝居を涙ながらに演じ、見事に不動産社員全員の同情を買いました。

とてもよい物件を紹介してもらい、まんまと家出を果たした。

ツラい事を忘れるために、あたしはひたすら、部屋の片隅でベースを弾いていた。

一緒に住んだ同級生とはあまり絡みたくなかった。

というのも、実はこの家出した先が、同級生の地元らしく、地元のヤンキーのたまり場になってしまったからだ。

友達は、地元の友達と遊び呆けて、学校に行かなくなった。

あたしは、度々記憶をなくしながらも、なんとか学校には通った。

家に帰り玄関を開けると、そこには見知らぬ男子が座っていて

「ご飯にする?お風呂にする?それとも、あ・た・し?(*゚ω゚*)ワクワク」

と聞いてくる。

じくい様「…4番で…」

自分ちに、見知らぬ男子がたまっている。

しかしそいつらは、同居人に、あたしのツラい出来事を聞いているらしく、何かと気を使ってくれた。

「一緒に飲もうよ」

「カラオケ行くけど一緒に行かない?」

「なんかさ、ぱぁーっと楽しもうぜ!」

それが最初は迷惑だったが、次第に、あたしは心をひらけるようになった。

そんなある日。

夏休みに入り、サボった分の足りない授業の補講の最終日。

うちにたまってるヤンキー共が、補講終了のお祝いに、と、酒を買って来てくれた(未成年)。

その優しさに、かなりグッときた。

あたしは、その心遣いといつも気を使ってくれてるお礼に、と、簡単なメシを作った。

「やっべ、超うめぇ!」

ヤンキー共は、こっちが恥ずかしくなるくらい、そのメシを喜んでくれた。

家には滅多に帰らない。

手作りのメシなんて何年ぶりだろ、なんて言う奴までいた。

「お礼にドライブ行くべ!」

あたしは、ヤンキー共の単車の後ろに乗り、深夜のドライブに出掛けた。

「超すげぇ場所あるんだぁ!」

じくい「どこどこ?」

「いいからいいから(笑)」

ヤンキーは笑っていた。

単車を走らせて数分。

嫌な予感がする。

じくい「ねぇ、この道ってさ…八木山橋に…」

「なにー?聞こえねぇーっすー」

間違いなかった。

単車は、地元じゃかなり有名な自殺の名所に向かってる。

じくい「あかんて!あたし、無理(゚д゚;≡;゚д゚)ブンブンブンブン」

風を切り裂く単車のヤンキー共に、あたしの声は届かなかった。 






ほどなくして、予感は的中(∩・∀・)ハィ

自殺の名所の橋に着いた。

「すげぇたけぇ(笑)」

橋には、高さが数mもある自殺防止の網状の金具が張り巡らされている。

かなり見上げる感じだ。

あたしは、橋のタモトに立ったまま、怖くて近づけなかった。

あたしには霊感がまるでない。

全く見えないし感じない。

しかし、ありえんくらいの霊媒体質。

近づいたら、絶対連れて帰る自信があった。

「こっち来なよー」

「すげぇ、こえぇ(笑)」

手を引いて、橋まで連れて行こうとするヤンキー。

じくい「絶対無理(゚д゚;≡;゚д゚)ブンブンブンブン
本気無理(゚д゚;≡;゚д゚)ブンブンブンブン」

「大丈夫大丈夫(笑)」

大丈夫じゃねぇ'A`

なんて説明したらいいんや?

霊媒体質なので、心霊スポットには足を踏み込めません、とか素直に言う?

素直に言ったところで誰も信じねぇだろ。

逆に、おもろがるかもしれん。

そんなん御免だ。

どう説明したら?

「ほら、こっち来なってよぉ(笑)」

だぁーっ(ノ ̄□ ̄)ノ ┫

じくい「あたし、高い所ダメなの!
おしっこもらすの!
うんこもらすの!」

精一杯のウソ(∩・∀・)ハィ

「あー、それは困るなぁ」

「単車汚されたくねぇもんな」

効果ありましたヽ(・∀・∀・∀・)ノイヤッホィ

うんにょもらすと思われたあたしを置いて、ヤンキー共は、橋の真ん中辺りまで歩いて行った。

単車は、橋のタモトに置き去り。

あたしはうんにょ座りで、単車に隠れるように、ヤンキー共の様子を見ていた。

まぁ、隠れる横幅じゃないで、向こうからは丸見えだったろうが、それは置いておく。

「誰が遠くまで飛ぶか、見ててー」

?( ゚д゚)??

ヤンキー共が手を振ってる。

と、次の瞬間。

一斉にオチンタを出しやがった。

そして、橋から、谷底へ



「ジョボボボボボボー」



ありえん。

男が4、5人、一斉に立ち小便をしだした。

しかも、自殺の名所のその谷底へ。

「おめぇ、飛ばし過ぎだろ(笑)」

「うわっ!こっち向くな!かかるべ?!」

笑い声がこだまする。 





一番手前。

あたしに近いヤンキー。

自分のオチンタを持ったまま、目線が固まっている。

何を見ているんや?

あ、いや、ナニを見てるんか(*´艸`)

1人で上手い事言ってニヤついていると、そのヤンキーの目線が、どんどん上がってゆく。

あきらかに、ヤンキーの目線は空を上がってゆく。

口をパクパクさせ、オチンタを出したまま、ヤンキーは腰を抜かしたように尻餅をついた。

そして、指を差す。

「あ…あ…あああああああああ!!!!!!!!!」

「なんだよどぉしたよぉ(笑)」

横ではしゃいでたヤンキー共が一瞬にして固まる。

腰を抜かした奴同様、一斉に目線が上がる。

そして、やっぱり一斉に腰を抜かした。

「うわあぁあぁぁぁ!!!!!」

どうしたのよ(´・ω・)

「なんだあああああああああ!!!!?????」

それはこっちが聞きたい(´・ω・`)

「ぎゃああああああああああ!!!」

うるさい(-"-)

腰が抜けたまま後ずさりしたその先。

反対側の橋の金網に手をかけたヤンキー。

ふと、その手の先を見て、また、目線が上がる。

「うわあぁあぁぁぁ」

「こっちにもいるうぅうう!!!!」

だから、何がいるのよ(・ω・`)?

「金網よじ登って…!うわあぁあぁぁぁ!!!!」

どうやら、橋の両側から、金網を『何か』がよじ登って来ているらしい。

奴らの反応を見る限り、それはこの世のモノではないのだろう。

ものすごい数の死人が、自殺した時の姿で、金網をよじ登ってきている。

それはまるで、映画やゲームの世界の映像だ。

しかし、今、それは彼らの目の前で、実際に流れている映像だ。

普段は喧嘩上等の彼らも、さすがに大混乱。

オチンタ出したまま、腰を抜かしてパニックになっている。






    σ(・ω・)






 な に も み え な い





このまま放っておけば死人が出る勢い。

しゃーないで、あたしが1人ずつエリを持って、ヤンキーを橋から引きずり出す。

単車の所まで来ると、ヤンキーは慌てて単車に乗り、我先に帰ろうとする。

じくい「1人で帰るな!事故に遭って連れてかれるぞ!」

ビンタをしつつ、みんなで帰り道で神社を通って帰るように促す。

1人、また1人、あたしはヤンキーを引きずり、単車に連れてくる。

橋の中に入る度に、身体が鉛のように重くなる。

霊感のないあたしにも、さすがに分かる。

とんでもない数が背中に乗ってる。

全員引きずり救い、単車に乗って、単車ごと神社を通って帰宅。

塩をまいて浄め、盛り塩で簡単な結界をした部屋で朝を迎えた。

大体の浮遊霊なら、神社の結界と塩で離れる。

他はどうしようもない。

悪夢とも幻覚とも違う、本物の信じられない光景が一晩続いた。

発狂しだすヤンキーに、何度も九字斬り。

日本酒飲ませたり、塩をかけたり。

ああ、ちゃんと修行しとけば良かった、とちょっぴり思った(´・ω・)






壮絶な一晩が終え、朝日と共に近くのお寺に理由を言い、お祓いを頼む。

説教されるが、そんなモノが全く耳に入らない状態のヤンキー共に、住職もため息。

あたしはまた別に、いつものお祓いを受けに行く。

そこそこ地元じゃ有名なヤンキーが、こぞってオチンタ丸出しで大錯乱した出来事。

一体何が見えていたんやろ?

あたしにゃ全く見えなかったが、一つだけ確実に言える事。

それは、面白がって心霊スポットになんざ行ったらあかんっちゅー事。

そして、自殺の名所で面白がって立ち小便をしてはいけないって事。

死人を愚弄する事は、決して誰にも許されない。