まだ、今ほど医学が発達していなかった当時の話。

死亡したと誤認された人が、墓に埋められてから意識を取り戻すことがあった。

ある村では万が一に備えて、棺から地上に繋がる呼吸用の管が備え付けられ、助けを呼ぶための鈴が遺体と一緒に埋葬されていた。


その夜、墓の管理を任されていた青年は、鈴が鳴る音を耳にした。

地元の子供がいたずらで鈴を鳴らすこともあったが、青年は念のため音のする方向へ向かった。

やがて鈴の音が近付いてくると、棺と地上を結ぶ管から、かすかに若い女性の声が聞こえてきた。


「誰かいませんか…助けてください…私をここから出してください…」


「あなたはサラ・オバノンですか?」


「そう…私は…サラ…まちがいありません」


「墓には、このように記されています。あなたは1857年2月20日に亡くなったと」


「違うわ!!私は死んでいません!!それは何かの間違いです…早く!!!早くここから出して!!!」


「申し訳ございませんサラさん。あなたを出してあげるわけにはいきません」


そう言うと、青年は地中からの声が聞こえていた管に土を詰めて塞いでしまった。


「あなたは戻ってきては、いけないのです」

それは暑い夏の夜の話。


22歳で亡くなったサラ・オバノンが墓に埋められてから、すでに半年以上が経過していた…